新型コロナウイルスの治療薬はまだない 予防のため全国民あげてワクチンを打とう(3月号)
人間の免疫システムは、体内に侵入した異物を分解して抗原と認識、さらにキラーT細胞を動員して即座に抗原を “敵” と認識して、徹底的に破壊する。ワクチンはウイルスの一部、もしくは毒性を弱めたウイルス全体を「抗原」として投与、特定のウイルスに対する免疫反応を作り出しておく。そして体外から侵入したウイルスに即座に対応させて破壊する。
ワクチンには、弱毒化した菌を用いる生ワクチンや、熱処理などで殺した菌を用いる不活化ワクチンがあるが、新型コロナウイルスに対するワクチンは、遺伝子工学の手法を用いた遺伝子ワクチンだ。日本に導入されるファイザー社のワクチンも日本で生産されているイギリスのアストラゼネカ社のワクチンも、この遺伝子ワクチンだ。
ファイザー社のワクチンは有効率95%で重篤な副作用は少ない。重篤な副反応はアナフィラキシーショックと抗体依存性感染増強(ADE)がある。アナフィラキシーショックの頻度は⾮常に低く、蜂に刺された時などでの対応策も確⽴している。抗体依存性感染増強は、中途半端な抗体ができて、それを介して免疫細胞に感染が広がる重篤な副作⽤だ。しかし、すでに接種を受けた1億1000万⼈(2⽉15⽇現在)に、報告がないので安⼼してよい。
ファイザーワクチンの第Ⅲ相臨床テストは、4万1100⼈を対象に欧米の流⾏国で⾏われたが、アジアの国は⼊っていない。このため、日本では認可にあたって、接種群116例プラセボ群40例で臨床試験が行われた。接種群で中和抗体価524.5、プラセボ群で中和抗体価10.6、とワクチンは有効であることが確認された。副反応は疼痛(84.3%)、疲労(62.9 %)、頭痛(55.1%)―などで、重篤な副反応はなかった。これらの反応はワクチン接種で免疫反応が強く起こっていることを示すもので、治療効果が期待される反応だ。
経済を取り戻すため、皆でワクチンを打とう。
新型コロナ感染死者数アジア1位に 治療薬はまだ無い! 予防のためワクチン打とう(4月号)
昨年7月、経済の再生を目的としてGoTo事業が開始された。1人が何人に感染させるかを示す有効再生算数が、6月は0・3程度だが、7月になって1を超えており、感染が広がっている中でのGoTo開始だった。開始した7月22日の全国の感染者数は792人で死者総数は989人。県を越えて移動はしないように、との分科会の提言下での開始だった。
9月1日の新規感染者数は624人、死者は1296人。GoTo開始から307人が亡くなっている中、菅首相は「GoTo事業を556万人が利用した」と経済効果を強調した。その後も感染者は増加し続け、11月20日の感染者は2301人、総死者数は1962人で、開始4か月で1000人亡くなった。
このため、GoTo事業を停止すべきとの意見が強まったが、菅首相は継続。1か月後の12月20日の死者は1000人増えて2899人となった。有効再生算数は2を越え、ようやくGoTo事業が停止された。
年末年始の20日間で1000人も亡くなった結果、国は首都圏と関西圏に夜8時以後の飲食店の時短営業要請を主体とする緊急事態を宣言した。しかし、宣言後も死者の急増は止まらず、2週間の緊急事態延長を決めた3月7日の感染者は1054人、総感染者は43万8956人、総死者数は8176人に達した。
3月21日に緊急事態は解除されたが、この日の感染者は1480人で、まだ増加している中での解除だった。特に12 月から2月までの3か月間の死者は6000人超となった。繁華街は若者で溢れ、変異型ウイルスの市中感染蔓延で死者が増えることが危惧される。
3月31日時点での死者数は9113人でアジアで1位。中国の死者数4636人のほぼ倍だ。感染者が死亡する致死率は1・9でアメリカの1・8より高い。オーストラリア、ニュージーランド、台湾では封じ込めに成功している。今こそ科学的見地から感染防御政策を推進すべき時だ。予防のため、国民はワクチンを打とう!