高齢化社会を迎え、ペットとの生活の共有は多くの人たちの重要な生きがいともなっている。2018年のペットフード協会のペット数に関する調査では、国内で飼われている猫は965万匹、犬は890万匹で、1994年の調査開始以来、2017年に初めて猫が犬より上回ったが、昨年も同様の結果だった。現在のペットの寿命は犬も猫もおよそ15年で、30年前に比し2倍も長生きとなっている。日本の狭い住宅事情と高齢化も手伝い、猫が好まれる傾向はますます強まっているようだ。
そんな中、ペットと肺がんの発生に関する研究が、Environmental Research 誌2019年2月25日号に掲載された。米国ジョージアサザン大学のAtin Adhikari氏らは、米国の全国コホートにおける18年間の追跡調査で、ネコを飼っている女性は飼っていない女性に比べ、肺がん死亡率が2.85倍と有意に高かったことを報告した。ペットによるこの影響は、喫煙や飲酒、アトピー性疾患の交絡によって説明されないという。研究の結果は、18万3094人の追跡期間中に肺がんで213人死亡し、肺がん特異的死亡率は1000人年当たり1.0だった。肺がんとペットの関係について、女性では、ペット所有者は非所有者に比べて、肺がん死亡率が2倍以上だった。ペットの種類別では、ネコが2.85、鳥が2.67、イヌが1.0で、ネコおよび鳥の所有者に、肺がんが多かった。男性では、ペットと肺がんとの有意な関連はみられなかった。
考察として、猫の毛が細く短いので、飼い主の肺に吸い込みやすいとみられている。鳥も肺がんとの因果関係が見られるが、やはり室内で飼っている鳥の細かな羽の吸いこみが原因とみられる。鳥にはオウム病などの感染症の危険もある。女性にのみ因果関係があるのは、女性の方がペットに口づけする、近付けるなどの、愛情表現が強いためとみられる。
(文責 竜崇正)