がんは種々の遺伝子の異常によって引き起こされます。その遺伝子異常を一度に調べることのできるがん遺伝子パネル検査が、2019年6月から保険適応となりました。がん遺伝子検査を受けるには、手術で摘出されたがん組織、または診断目的で採取されたがん組織が必要です。3年以内のものが望ましいとされます。
血液のがんは、今回はがん遺伝子パネル検査の対象になっていません。これらの検査は、国立がん研究センター中央病院や東病院、その他の「がん中核拠点病院」で受けることができます。関東では、東大病院、慶応病院です。これらの遺伝子パネル検査はまだ100から300程度の遺伝子異常を調べるのみで、全ての遺伝子異常を調べるレベルにはないので、限界があります。しかし、標準治療で効果が得られなくなった方には朗報です。
この遺伝子パネル検査で、治療と関連する遺伝子の変化が見つかる可能性は5割程度。実際にその結果に基づいて治療が実施された患者さんは、全体の1割から2割程度です。具体的な治療薬が見つかった場合でも、それらの治療が保険診療で実施できない場合も多いです。その場合、関連する治験がある場合は、治療が可能になります。それ以外は保険適用外として治療する場合には、先進医療や患者申出療養等の制度を用いる場合や、自費診療などが考えられます。
遺伝子パネル検査により、明らかにできる遺伝子異常の数は徐々に増えることが期待され、患者の遺伝子情報全体を網羅的に調べる「全ゲノム解析」が行われる方向になっています。多くの症例での「全ゲノム解析」ができれば、日本から新たながん治療薬が創薬される可能性も期待されます。現在、進行がんで悩まれている方も、希望をもって、明るい気持ちで自己の免疫力を高めて生活していくことで、新たな治療薬に巡り合う日が来るかもしれません。
(文責 竜崇正)