本番2ヵ月前から直接指導
得意技のキレを戻す練習で金メダル取り
8月のリオデジャネイロ五輪で柔道日本復活を印象付けた日本チームの大活躍。
なかでも、日本勢初の90キロ級金メダリストに輝いたベイカー茉秋選手(21)=東海大=を東海大浦安高時代、育て上げたのが柔道部監督(当時)で、現部長の竹内徹さん(57)
「(決勝が行われる)3日前に、リオ入りし、練習会場で直前、茉秋を見て “緊張感とリラックス” のバランスがとれていたので、”金メダル、いける” と確信した」
同校武道館での柔道部員指導の合間のインタビュー。4月下旬の日本代表選出からリオ本番まで “金メダル取り” の秘話を話してくれた。
代表に選ばれた茉秋選手から竹内さんに久しぶりに電話があった。「(リオ五輪で)メダルを取るには何か足りないものがあるんです」と危機感を訴えた。福岡での最終選考会決勝で負けたが国際大会の実績で代表に選ばれたのを会場で見ていた竹内さん。
「研究され、技の威力がなく、巧く相手を攻められなかった」点が指導のポイントになると見抜いた。
本番まで2カ月足らず。井上康生監督の許可をもらい、5月のGW全日本合宿(東京・北区)に連日、浦安から車で指導に駆けつけた。「高校時代の得意技、大内刈りの原点に戻ったほうがいい」と、技のキレを取り戻す練習を繰り返させたという。指導はその後、神奈川・平塚の大学までも週に1~2回、車で2時間かけて行った。
それだけに、カリオカアリーナでの決勝でみごと優勝した教え子から「竹内先生のおかげです」といわれ、すなおに光栄だと喜んだ。
高校時代に高校選手権・金鷲旗、インターハイの3冠を獲得した茉秋の大器ぶりは見抜いていた。「今回の金メダルにも本人は満足していないはず。レジェンドになりたいといっていたので、東京五輪をもちろん目指すだろう。技術・体力もピークでなく伸びる段階」と指摘。
そのうえで、「周りが大騒ぎするだろうが、平常心を保ってほしい。そして、チャレンジの気持ちをどこまで強く持てるかが今後の成長のカギ」とエールを送る。