次世代に浦安の価値を伝えたい
昨年秋、境川クリーンアップが行われた。こどもたちからシニア世代まで多くの市民が参加、周辺を清掃した。
主催した「境川であそぼう実行委員会」の実行委員長が中野恒明さん。率先して清掃活動に取り組んだ。「境川は浦安の母なる川です。オール浦安で上流から河口まできれいにしていきたい」と笑顔で語る。
また、Eボートを境川に浮かべてこどもたちを乗せ、水辺の景観を楽しむ活動も続けている。本業は都市デザイナーだ。これまでに北九州市・門司港レトロの環境デザインや東京・渋谷川清流再生、皇居周辺道路景観整備計画、横浜市・みなとみらい21新港地区景観計画などに携わってきた。
高校生のころから、建築系の仕事を志望した。東京大学工学部都市工学科を卒業。20代でヨーロッパを放浪、初めて西欧文化にふれた。
その後、アプル総合計画事務所を設立。本格的に仕事に取り組み、実績を積んだ。今や「業界の駆け込み寺。困ったときの中野さん」と称される。「プライドを持つ。自分の仕事に対する責任を全うする。そうしないと、世の中、よくならない」
昭和50年代、千葉市から浦安に引っ越してきた。「少年時代、瀬戸内海の海辺で育った。海のそばで暮らしたかった。こどもといっしょに、ハゼ釣りをするのも楽しいかなと…」
新浦安地区の戸建て住宅で快適に暮らしていた。ところが、10年前、東日本大震災が発生した。中野さんは帰宅難民となり、翌日、浦安に帰ってきた。
「なんじゃこれは、と驚きました。住宅がみんな傾いている。一面、泥と砂でおおわれ、街全体が白っぽく見えました」 自宅も傾いていた。床にテニスボールを置くと、コロコロ、転がった。職業柄、水準器で計測。3.3%の傾きだった。隣家も計測したところ、口コミで広がり、150軒以上の被害状況を計測した。
また、家の傾きの修復工法を研究。サイトを公開して復旧に貢献したという。
浦安には近世の町並みから最先端のマンションまで様々な建物群がある。「近世と現代、両方ある。すばらしいじゃないですか。境川や三番瀬、水辺の存在も貴重です。次の世代まで浦安の価値を伝えていきたい。いいことをして人生を終わりたい」
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昭和26年、山口県宇部市出身。一級建築士、技術士、芝浦工業大学名誉教授。趣味はゴルフ(コロナ禍で休止中)、日曜大工。好きな人物は郷土の風雲児、高杉晋作。大切にしている言葉は「人生は一度しかない」