新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の勢いが止まらない。国の専門委員で北大の西浦教授は、⼈との接触を8割下げなければ、重症患者が累計85万3千⼈になり、その49%(41万8千⼈)が死亡すると警告。
感染防御には人との接触を避ける
この結果を受けてか、4月16日にようやく全国への非常事態宣言が出された。多くの施設に休業要請をし、国民には不要不急の外出をと、さらに3密(密接、密着、密集)を避けるよう働きかけている。その後の4月19(日)、20(月)のNTTドコモの位置情報の検索で、主要駅や主な繁華街の人出は70―80%に削減された。しかし、地域の商店街や遊興施設には人が溢れている状態だった。人との接触8割削減は、絶望的状況である。
有効な治療薬や予防薬がない現在、コロナ感染防御対策は人から人への接触を下げるしかない。感染源不明の頻度が高い中、クラスター対策を主とし、新型コロナウイルのPCR検査をせず、都市封鎖せずに立ち向かっている国は日本だけである。Imperial College London、WHOを中心とした研究チームは、ヨー ロッパ11カ国を分析して、コロナ感染を⽌めるには、都市あるいは国の封鎖パ11カ国を分析して、コロナ感染を⽌めるには、都市あるいは国の封鎖(lockdown) が有効であると報告した。すなわち、イギリスでは1⼈の感染者が 他人に感染させる係数Rは4だったが、3⽉中旬から感染者隔離、社会的距離の保持、学校閉鎖などの対策をとり、Rは2に減少した。だが、依然として感染者は倍増していた。それが、3⽉24⽇に完全な都市封鎖と公共事業の禁⽌により、やっとRが1となり、他への感染が止まったとの報告である。
封鎖政策が解決策
ヨーロッパ11カ国のうち、3⽉10⽇から24⽇までの間に封鎖政策をとった10カ国(ドイツ、スイス、ノルウエーなど)は、全てRが1前後に落ちた。これに対し、封鎖政策をとらなかったスウェーデンは2―3の間に留まり、封鎖政策が唯一の解決策であるとの報告だった。現在は第3次世界大戦とも言うべき、人類と新型コロナウイルスとの戦いである。特に誰が感染しているかわからなくても、患者診察の責務を負っている医療機関は脆弱で、クラスター化した感染が医療機関中心に広がっている。医療崩壊しているのだ。
PCR検査を徹底し、感染実態を厳密に把握し、それに応じてロックダウンを含めた対策を取るべきだ。国民の命を守るのが国家の勤めであり、社会が崩壊しないように休業保証は、速やかに高額の現金給付を無条件で何回も行うべきである。世界経済も疲弊している中、経済政策を行っても、今は無効だ。感染を制御してから、世界と協力しての強力な経済政策を講じればよい。
PCR検査は鼻咽頭粘液採取で行うが、検体採取の際のくしゃみや咳のため、検査する医療者の感染の危険がある。このため、韓国では危険の少ないドライブスルー方式で行い、コロナウイルス封じ込めに成功した。このことから、東京都医師会、千葉市などでドライブスルー方式のPCR検査を行っている。また、最近はコロナウイルスの存在そのものを調べる抗原検査の開発が進められている。早期に確定診断に利用できることを期待したい。
今後は予防薬や治療法に期待
予防薬として、抗マラリア薬・クロロキンやヒドロキシクロロキンを、医師や看護師等の医療従事者が服用して、感染を予防できるかの臨床試験が、世界規模で4月22日から行われている。患者と知らずに接触した医療従事者や家族等にも抗マラリア薬を短期間投与する、曝露後発症予防試験も始まっている。また4月10日にグーグルとアップルは、コロナウイルス接触者検出スマートフォン技術を共同開発することを発表した。世界の2大情報会社の協力で、数ヵ月以内に可能になることが期待される。
現在、コロナウイルスに対する、明らかに有効な治療法は、まだない。検討中の候補薬は、抗HIV薬のカレトラ、インフルエンザ治療薬のアビガン、吸入ステロイド薬のオルベスコ、膵炎などの治療薬のフサン、フオイパン、抗ウイルス薬・レムデジビル(日本未承認)の5剤である。レムデジビルは2019年のエボラ出血熱流行時に使用されて、安全性は確立されている。同じコロナウイルスのSARSにも有効だった。レムデジビルの治験は国際多施設共同試験として、日本、アメリカ、韓国、シンガポールなど約75の医療機関で、最終的に440名を集めて実施されている。53例に投与した最初の報告では(日本からの症例9例を含む)36例(68%)で臨床的改善があったと、rNEJM誌オンライン版2020年4月10日号で報告された。アビガンの有効性の報告もあり、効果ある治療薬は、さらに増えるだろう。