漁村文化研究会よりコレクション寄贈を受け
浦安市郷土博物館は、漁村文化研究会が昭和46(1971)年から収集してきた漁撈(ぎょろう)用具コレクション650点の寄贈を受け、研究会と学芸員による調査研究を行ってきた。その成果として、このたび3冊目となる新しい報告書「浦安の漁撈用具3」が刊行された。漁師町だった往時の浦安を知ることができる貴重な文献だ。
浦安は大消費地の江戸(東京)に近く、昔から魚介類の供給地として栄えてきた。鮮魚などが輸送され、寿司や天ぷらの食材となり、江戸前の食文化発展を支えていた。
ところが、昭和30~40年代、海水汚染や埋め立てなどの影響で、漁師町、浦安は大きく変貌した。
東邦大学の学生たちは浦安を訪れ、調査・研究を始めた。研究会の栗山堯男さんは「当時、漁業権を放棄。べか舟や漁具がトラックに積み込まれ、処分されようとしていた」と振り返る。
漁師たちに声をかけると、「いらないから、あげるよ」との返答。学生たちは漁具などを集め、保管していった。
中西一善さんは「どんな漁をやっていたのか。多くの漁師と会って聞き取り調査を行いました。浦安弁で、意味がわからないこともありましたが、相手は親切で、ていねいに説明してくれました」と笑顔で語る。
西野洋一さんは「私は東京の下町出身です。浦安から行商に来ていたので親近感があった。当時、80代の漁師は明治時代の漁を教えてくれた」と話す。
研究会と学芸員は、貴重な証言を分析するなどして、浦安の漁法一覧を作成した。
大人数で行う巻網漁は当代島地区が中心だった。刺網漁は堀江地区が中心になって行っていたという。漁法は多彩で200種類を超えていた。
漁村文化研究会のメンバーは大学卒業後も活動を続けている。そして半世紀にわたる資料収集と調査活動が高く評価され、浦安市教育功労賞を受賞した。
報告書は1冊800円。問い合わせは浦安市郷土博物館(でんわ047―305―4300)