妻との “壮絶な” 苦闘を出版
「エイジレスライフ章」を受章
高齢化社会は浦安市にも、その波紋が広がっている。それに伴い認知症と診断(判断)される高齢者はふえる一方。こうしたなか、認知症妻の介護体験を生かして認知症家族を勇気づける活動をしながら、妻との “壮絶な” 苦闘を2冊にまとめて出版したのが武元さん。
妻(75)が認知症を発症し、浦安市の特別養護老人ホームに入所するまでを振り返った。
平成17年11月、妻が「人生十分に楽しんだわ。いくら生きていてもきりがないのよ。だから、私お先にゆきます」と言い出した。このころから、頭痛のタネがふえた。レストランでは順番待ちせず、空席に勝手に座り込む。冷蔵庫には納豆がいっぱい…。一大決心をして病院に連れて行くと、診断は認知症。症状は徐々に進み、専門医から難病と診断された。
当初は妻を自宅で介護した。1日に11回も”外出”。レジを通さず物を持ち帰り浦安署から呼び出し。食卓にはアンパン、ドーナツのヤマができる。我を忘れて激しい怒りを抑えられず、そのヤマを床にたたきつけた。
怒ったのはこの1回だけ。「認知症に一番きく薬はやさしくすること」という担当医の言葉を思い出す。介護でぎっくり腰になり、医師から「介護をひとりでやるのは無理」と諭された。妻の認知症は進み、介護5になって、24年11月、特別養護老人ホームに入所できた。
武元さんは健康には人一倍気を遣う。朝6時に起床、ラジオ体操、野菜中心の食事、規則正しい生活。妻を支えるのは自分だけという責任感からだ。
保険会社を退職後初めて、自分の時間がやっと持てるようになった。そんなとき、市認知症家族交流会の存在を知り、自らのモットー「明るく!楽しく!前向きに!」といった会にしたいと、いつも前向きな話題の提供を試みたという。
いまは妻の居るホームで、配膳や食器洗いの奉仕をしたり、介護で悩んだ体験を生かそうとNPOキラキラ応援隊に参加したりして余暇はすべて介護ボランティア活動に充てている。
長年の妻との介護生活を紹介した「私お先にゆきますわ」、老いと介護の問題に向き合った「介護の愛、老いの幸」を春秋社から出版(共に1600円+税)。27年、内閣府から「エイジレス・ライフ章」を受章した。
「エイジレス・ライフを実践することが当たり前になるだろう。高齢者は生きがいを持つことが大切」という武元さんの言葉の意味は重い。