人間の免疫システムは、体内に侵入した異物を分解して抗原と認識、さらにキラーT細胞を動員して即座に抗原を “敵” と認識して、徹底的に破壊する。ワクチンはウイルスの一部、もしくは毒性を弱めたウイルス全体を「抗原」として投与、特定のウイルスに対する免疫反応を作り出しておく。そして体外から侵入したウイルスに即座に対応させて破壊する。
ワクチンには、弱毒化した菌を用いる生ワクチンや、熱処理などで殺した菌を用いる不活化ワクチンがあるが、新型コロナウイルスに対するワクチンは、遺伝子工学の手法を用いた遺伝子ワクチンだ。日本に導入されるファイザー社のワクチンも日本で生産されているイギリスのアストラゼネカ社のワクチンも、この遺伝子ワクチンだ。
ファイザー社のワクチンは有効率95%で重篤な副作用は少ない。重篤な副反応はアナフィラキシーショックと抗体依存性感染増強(ADE)がある。アナフィラキシーショックの頻度は⾮常に低く、蜂に刺された時などでの対応策も確⽴している。抗体依存性感染増強は、中途半端な抗体ができて、それを介して免疫細胞に感染が広がる重篤な副作⽤だ。しかし、すでに接種を受けた1億1000万⼈(2⽉15⽇現在)に、報告がないので安⼼してよい。
ファイザーワクチンの第Ⅲ相臨床テストは、4万1100⼈を対象に欧米の流⾏国で⾏われたが、アジアの国は⼊っていない。このため、日本では認可にあたって、接種群116例プラセボ群40例で臨床試験が行われた。接種群で中和抗体価524.5、プラセボ群で中和抗体価10.6、とワクチンは有効であることが確認された。副反応は疼痛(84.3%)、疲労(62.9 %)、頭痛(55.1%)―などで、重篤な副反応はなかった。これらの反応はワクチン接種で免疫反応が強く起こっていることを示すもので、治療効果が期待される反応だ。
経済を取り戻すため、皆でワクチンを打とう。