あいさつは商売の基本 おいしい魚でお客を笑顔に
「おはようございます」東京都中央卸売市場豊洲市場(東京都江東区)で生鮮魚介類などを仕入れ販売する仲卸会社「山治(やまはる)」社長、山﨑康弘さんが大切にするのが朝のあいさつだ。
「あいさつは商売の基本です。あいさつから人の出会いが始まる。あいさつ日本一の企業を目指しています」と明るく笑う。
山﨑さんは浦安出身。江戸時代から続く旧家だ。「享保年間、(第8代将軍)徳川吉宗の時代から、浦安で暮らしている。私は18代目です」
明治大学卒業後、商社に就職した。20代で、家業を継ごうと決心。父親の治雄さんが戦後、築地市場で創業した仲卸の仕事を始めた。
「築地の勢いに圧倒されました。悔しい思いもしました。負けたくない。早く、魚のことを覚えなければ。必死でした」と振り返る。
山治は半世紀にわたって築地市場で営業を続け、平成30年、豊洲市場で新しくスタートした。鯛、ヒラメ、ウニ、貝など多くの水産物を取り扱う。首都圏や海外などに販路を開拓。豊洲市場最大級の仲卸会社に発展した。
「東日本大震災などいろんなことが起きました。何度も浮き沈みがありましたが、社員とお得意さんのおかげです」 社員は約100人。若者が多い。地元・浦安、明海大学の体育会系学生も入社し、元気に働いている。
午前1時から、仕事が始まる。長年培った経験を活かして入荷した水産物を丹念に下見する。午前5時から、競りが始まる。さあ、勝負だ。見定めた逸品を競り落とす。店に運び、販売する。多くの買出人が訪れる。ホテル、スーパー、名店のシェフや板前らが仕入れに来る。
「お客さんの要望に応えるのがわたしたちの使命です。裏切らない。全社一丸となって取り組んでいます」
仕事が一段落するのは夕方。帰宅して午後7~8時には就寝するという。多忙な日々だが、元気いっぱい。威勢がいい。
今春、新型コロナウイルスが襲いかかってきた。売り上げが激減した。打開策として考え出したのが「豊洲山治オンライン魚河岸」だ。海外担当者らが部署の壁を越えて参加。会社がワンチームになった。サービス体制や商品ラインナップなどを再編成し、6月中旬から本格稼働する。
「鮮度を考えて、首都圏限定で始めました。応援してくれる人が多い。注文はすごいですよ。浦安の人もいっぱい買ってくれる。喜びのメールも届きます。大変なときに応援していただき、ありがたい。落ち着いたら恩返ししたいです」
学生時代は水球部。信条は「一生懸命」。好物はサンマ、枝豆、そしてビール。
「漁師町、浦安で育ち、魚河岸で仕事をしている。お客さんが『うまい!』と言って笑顔になるために。まっすぐにおいしい魚を届けます」