ごーん、ごーん……。浄土宗大蓮寺(浦安市堀江)の鐘の音が響き渡る。
寺の歴史は古い。天文13(1544)年に創建されたという。
江口隆定住職は「代々、継承されてきたお寺です。歴史と伝統を引き継ぎ、地域社会に根差していきたい」と語る。
境内に鐘楼が建つ。午前11時に時の鐘を告げる。
「浦安はかつて半農半漁の村でした。住民は早朝、暗いうちから海や田畑に出かけ、働いていました」と江口住職はいう。
住民たちは大蓮寺の鐘の音を聞くと「もうお昼だ。そろそろあがるか」と自宅に戻り、昼食をとったという。
寺の鐘は戦時中、金属供出で一度、姿を消した。戦後、多くの住民が協力して資金を出し合い、復興された。
昨年、国連が定めた国際平和デー(9月21日)には、市民らが平和を祈念して「平和の象徴の鐘」を打ち鳴らした。
大蓮寺山門脇には久助稲荷がまつられており、不思議な話が伝わる。
江戸時代、大蓮寺で修行した学誉上人は芝・増上寺の大僧正となった。
ある日、庭先に大蓮寺の使用人だった久助が現れた。学誉上人に「お稲荷様が荒れ果てているので建て直してほしい」と頼むではないか。願いは聞き届けられ、稲荷神社は復興された。
江口住職は「ところが、久助は20数年前に亡くなっていたのです。現れたのはお稲荷様の化身だったのではないかとささやかれ、名称を久助稲荷と改めたそうです」と話す。
その久助稲荷は最近、老朽化していたが、令和の建て替え工事が行われ、多くの住民から浄財が寄せられた。今春、りっぱな社殿が建てられた。
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江口住職は幼いころから、寺の跡取りとして育てられた。小学生からお経を覚えたという。大正大学仏教学部を卒業。大蓮寺副住職となる。
30代で「地域に貢献したい」として浦安青年会議所に入り、活躍。理事長を務めた。
好物は野菜スープとそば。好きな人物は坂本龍馬。「型破り。信念を貫き、突き進んでいく力強さ」に魅力を感じるという。百田尚樹の作品を愛読。信条は「努力」。