東京五輪・柔道男子100キロ級、21年ぶりの快挙
7月29日、日本武道館で行われた柔道男子100キロ級で、浦安市にある東海大浦安高出身の、ウルフ・アロン選手(25)=了徳寺大学職員=が金メダルを獲得した。本人は「泥くさい柔道が持ち味」と語るが、優勝を決めた一本は、鮮やかな大内刈りだった。
決勝戦の相手は、最も警戒していたチョ・グハム(韓国)。対戦成績は1戦1敗だ。試合は両者とも1回ずつの指導を受け、決着がつかず延長戦へ。延長戦に強いことから「ウルフタイム」と呼ばれる時間帯に持ち込んだ。ウルフは終始攻め続け、相手の体力を奪う。そして延長5分30秒過ぎ、大内刈りで一本を取り、優勝を決めた。
両手でガッツポーズをした後、涙…。続けてきた努力の全てが報われた瞬間だった。柔道男子100キロ級の金メダルは、2000年シドニー五輪以来、21年ぶりの快挙である。
3冠王達成への道のり
柔道の3冠王は、全日本柔道選手権大会、世界柔道選手権大会、五輪の全てを制覇すること。これまで、山下泰裕、井上康生など、7人しか達成していない。ウルフは五輪前、「歴史に名を残す3冠王になりたい」と語っていた。
しかしウルフは、小さい頃から強かったわけではない。中学までは、全国大会に出場したこともなかった。中学で柔道はやめよう、と思い詰めたとき、幼い頃から共に練習をしていたベイカー茉秋(2016年、90キロ級金メダリスト)が、すでに進学していた東海大学付属浦安高校を薦めてきたという。
ウルフは、トレーニング方法など、人から教えられるより、自ら考案したいタイプ。同校の練習方針はピタリとはまり、実力を伸ばした。東海大学へ進学し、現在は了德寺大学職員で、東海大学のコーチも務める。
2017年世界選手権、2019年全日本選手権で優勝したが、2019年12月、ワールドマスターズで負傷した右膝半月板を手術。柔道ができない期間は、筋力・体力の向上を目指しトレーニングに励んだ。今年3月のグランドスラム・アンタルヤで2位、4月のアジアオセアニア選手権は優勝と、復帰戦では手ごたえをつかんでいた。
そして、3冠王の称号をかけて臨んだこの五輪。ウルフは大きな夢を、地元開催の大舞台で見事に実現させた。輝く金メダルは、浦安市民への最高のプレゼントになった。
内田悦嗣浦安市長のコメント
「ウルフ・アロン選手の金メダル獲得、心よりお祝い申し上げます。東海大浦安高校で学び、現在も市内の了德寺大学に勤務されているウルフ選手が、世界へ羽ばたき、目標としていた東京オリンピックでメダルを獲得できたことは、この上ない喜びです。今後は、メダリストとして、さらなる活躍を期待します。」
日本が銀メダルを獲得 柔道混合団体、ウルフも奮闘
7月31日、五輪の新種目・柔道混合団体戦が行われた。男子3人、女子3人の6階級で勝敗を争う。日本の初戦、準々決勝はドイツと対戦。最初の2人が負けて苦しい展開となったが、ウルフ・アロンはフレイとの試合で延長戦の末、肩車で技ありの勝利。日本の勝ち上がりを決めた。準決勝ではROCを4―0で退け、メダルを確定させた。
決勝戦の相手は強豪フランス。ウルフには1勝2敗で回ってきた。今大会、100キロ超級で銅メダルを獲得、これまでの五輪で2連覇を果たしてきた王者・リネールと対戦。延長までもつれ込んだが、最後はリネールの技ありで、惜しくも敗れた。日本は決勝の戦績は1勝4敗で銀メダルとなり、初代王者の座に、あと一歩届かなかった。ウルフは「リネールは勝たないといけない壁。しかし、ふがいない結果となった」と悔しがった。