〝U-ing〟を見守り育て、「夢」を託す
浦安鐵鋼団地内の通りに屋台が並び、市民や子供たちでにぎわった。10月14日に同団地の鉄鋼通りで開催された「第12回ゆ~ゆ~カーニバル」のイベント会場だ。
カーニバルは鐵鋼団地の若手後継者の主催で平成7年から始められた。この若手後継者たちは将来、経営者として団地を背負うことから、「Uing」(ゆーいんぐ)と名付けた。Uは「うらやす」であり、ingは「進行形=つまり経営者に育つ途中の若手」という意味が込められている。
U-ingは平成2年に結成されたが、7年の組織を設立して5周年のとき、「何か記念になることはできないか」という意見が出された。いろいろ話し合った際、「ほかの工業団地では『祭り』が活性化しているところがあり、とても素晴らしかった」という声が出た。浦安鐵鋼団地の周りは住宅地だ。そこで住民との交流と、団地に入っている会社の従業員たちの慰安のため、「ゆ~ゆ~カーニバル」を開くことを決めたという。
湊さんは理事長として、そのU-ingを見守り、育てる立場だ。同団地は200社を超し、4000人以上が働いている日本最大の鉄鋼流通基地であり、理事長として協同組合を運営する立場は非常に重い。
「ゆ~ゆ~カーニバル」は、湊さんが鐵鋼団地協同組合の理事に就任して1年目に始まった。Uingは資金を工面する大変さもあるため、カーニバルは2年に1回、隔年で開催することにした。屋台では、簡単に作ることができる焼きそばなどの飲食や、カボチャなどの野菜を中心にした物品販売を行っている。
湊さんは今回、トウモロコシ、カボチャ、リンゴを扱った。「販売価格は安く、もうけはありませんが、従業員の慰安ができたら良いな、と思っています」と語る。その思いは十分かなえられているようだ。
また、販売とは別に、特設ステージを設けて、バルセロナ五輪の柔道家、吉田秀彦さんによる「青空柔道教室」やウクレレ演奏、「快盗ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー」のキャラクターショーを行った。
団地内の路上では、阿波踊りや北海道標茶町の牛の着ぐるみが練り歩き、観客を喜ばせた。「牛の着ぐるみは団地内の会社が標茶町に事務所を出したので、『カーニバルに参加しませんか』と声をかけましたら、標茶町のPRにきています」と湊さん。鐵鋼団地は全国各地ともつながっている。
12回になる「ゆ~ゆ~カーニバル」は地域の人たちに定着し、「開催を楽しみにしてもらっています」とうれしそうだ。
湊さんには、これといった趣味はなく、「私のすることは、すべて仕事の延長線です。ゴルフも〝会合〟の一つです」と語る。加えて「山は好きですが、『登る』のではなく『歩く』ですね」とも。酒はほとんど毎晩のように飲むそうだが、「カーニバルでは終わりのことは覚えていません」と豪快に笑った。
その湊さんは理事長の立場から、カーニバルの準備から後片付けまで担っている若手後継者たちに「鐵鋼団地を時代に即応して仕事ができるよう、続けていってもらいたい」と期待している。
そのうえで、いずれ浦安鐵鋼団地は鉄だけではなく、アルミも扱う団地に変わっていくのではないか、とみている。それは湊さんが思い描く鐵鋼団地の「将来の姿」であり、若手経営者たちに託した「夢」である。