こんにちは。弁護士の矢野京介です。今回は、離婚の際、退職金は財産分与の対象になるのかという問題についてお話しします。退職金ですと、場合によっては何千万という金額になることもあるので、財産分与の対象になるかどうかというところは非常に切実な問題といえます。
財産分与の対象となる財産は何かというと、基本的には、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた全財産が対象となります。退職金には給与の後払い的な性質があると考えられているため、退職金が支給されれば、それは当然、財産分与の対象になりえます。
しかし、一般的に退職金が支払われるのは退職時で、会社の経営状態や退職理由によっては支払われない可能性もあり、確実に支払われるという保証があるわけではありません。そのため、退職までにはまだ何十年もあるというケースでは、一律に退職金を財産分与の対象にしてしまうのは不都合です。
退職金を財産分与の対象とするためには、まず、退職金の支給が確実であると見込まれることが必要になります。どのような場合に支払われる見込みが高いと考えるのかについては、裁判所では (1)就業規則 (2)支給までの期間 (3)会社の経営状況などを見て決定します。
支給が見込まれる場合であっても、その全額が対象になるわけではなく、婚姻期間(退職金の形成に貢献している割合)に応じた部分のみが対象となると考えられています。
退職金を財産分与の対象にできるのか、またできる場合、どのような計算方法をとるべきかはそれぞれの事情によって異なりますので、弁護士などの専門家に相談することをお勧め致します。