私たちが暮らす浦安を歩いてみよう。小さな発見があるかもしれない。第2回は「境川を踏破する」。梅雨の晴れ間、浦安の中央部を流れる境川に沿って探訪した。
出発地点は河口。東京湾が広がる。遠く、木更津方面まで見渡す。さあ、歩いていこう。両岸に青々と茂る桜並木。春には見事な花を咲かせる。若潮公園に立ち寄った。漁船と魚、貝をかたどった造形物がある。
「浦安町漁業記念碑」。往時、漁家1800戸を越え、漁業の町、浦安の名は天下津々浦々に及んだと記されている。公園内にヤギなどが飼育されている。子供たちが緑の丘を駆け上っていった。
市役所を右手に見て進む。「常灯明跡」の表示があった。明治時代、暴風雨による漁船遭難事件が起きた。寺の住職が夜間、石油ランプを灯して漁師たちの道標とした。その後、鉄骨造りの常灯明が建設されたという。
◇快適な遊歩道
東水門の先は、洗練された仕様で整備されている。快適な遊歩道だ。若い男女が楽しげに歩く。足取りが軽くなる。豊受神社に参拝した。境内には銀杏の大木が枝を伸ばす。2基の神輿が置かれている。白木の神輿と塗りの神輿。4年に一度の浦安三社祭は今年6月に開催される予定だった。だが、新型コロナウイルスの影響で延期となった。神輿は出番を待っているかのようだ。
昼食時だ。豊受神社近くの「太月(たいげつ)」に入る。プロ野球巨人の阿部慎之助2軍監督(浦安出身)が少年時代から通った店だ。カツ丼を注文する。分厚い肉にかぶりつく。うまい。
◇おっぱらみ
境橋の近くに表示があった。興味深い逸話が記されている。 江戸時代、行徳には塩田があった。梅雨の季節、製塩関係者が境川をせき止めた。海水の塩分濃度が下がるのを防ぐためだ。だが、浦安の漁師が漁に出るには不便となる。漁師たちは団結して製塩関係者を追っ払った。故事にちなみ、この辺りはかつて、「おっぱらみ」と呼ばれていたそうだ。
明治時代に創業された浅田煎餅本舗で、詰め合わせと青のりせんべいを買う。家族への土産だ。
かやぶきの古い民家が建っている。旧大塚家住宅。江戸時代末期の建築と推定される。大塚家は漁業と農業を営んでいた。中に入ってみよう。座敷に座る。心地よい。
新橋を越える。最終目的地、西水門に到着した。河口を出発して3時間余……。よく歩いた。桜の木陰で憩う。旧江戸川から涼しい風が吹いてくる。達成感が心の中に満ちてくる。