今年7月、軽症~中等症用の治療薬「抗体カクテル療法」が新たに承認された。これまで新型コロナの治療薬は、中等症以上の患者に対するものばかりが特例承認を受けてきた。軽症の患者も辛い症状が出るのだが、世界的に死者を減らす観点からの治療薬が優先的に開発されてきた。
今まで承認されていた治療薬は、ウイルスが増えるのを抑えるレムデシビル(商品名:ベクルリー)、ウイルスによる炎症を抑えるデキサメタゾン、バリシチニブ(商品名:オルミエント)、の3つ。
デキサメサゾンは標準的なステロイド薬として日常的に用いられており、CОVID-19では合併する肺炎やサイトカインストームなどの治療目的に使われる。オルミエントは強力な関節リューマチ治療薬としても承認されている。
今回承認された「抗体カクテル療法」は、アメリカのリジェネロン社が創製したウイルスの働きを抑える薬だ。カシリピマブとイムデピマブという2種類の抗体を組み合わせて、点滴治療するもので、軽症の患者の重症化を防ぐ目的で使用される。アメリカのトランプ前大統領も使用した。
海外の論文では、入院や死亡のリスクを約70%減らすと報告されている。2020年12月に、中外製薬が日本での開発権と今後の独占的販売権を取得した。日本での7月承認後も、入院患者に限って使用されていたが、感染しても入院できない現状から、8月13日からはホテルなどの療養施設での使用が認められるようになった。
しかし、治療を受けられないまま、自宅で亡くなる人も多い。必要な患者に必要なだけ使用できるように、そして自宅でも抗体カクテル療法ができるようにすることを、政府に期待したい。
この抗体カクテル療法に依存せずとも、自身の中に抗体を作ることができる方法が、現在積極的に国が推進しているワクチン接種だ。全国民がワクチンを打って「集団免疫」を獲得し、更に発症した人に早期に「抗体カクテル療法」するのが命を守る一番の近道だ。