演者・囃子方の呼吸が人を感動
テケテン、テケテン―。浦安市の郷土博物館から、耳ざわりのいいリズムが流れてくる。月2回、浦安囃子保存会会員たちの稽古のひとこま。創立70周年迎え、10月の記念公演に向け練習にも拍車がかかる。
同保存会会員は高校生から80歳代までの50人。会員たちを総務の吉野忍さん(55)とともに指導するのが杉山さん。生まれも育ちも浦安。「実家は農家で “半農半漁”。終戦ですさんだ時代の昭和21年、まちをにぎやかにして、盛り上げたいと先人たちが結成した保存会。5年後に入会しました」。
約60年の活動歴があり、浦安囃子の “生き字引” 的存在。5月下旬の「カフェテラスin境川」で20年ぶりに復活した「水神祭」でも協力。市内の伝統芸能継承に欠かせない。「浦安囃子は一人前になるのには30年はかかるが、一緒に踊るのなら2~3年で演じられるようになる。100周年まで保存会がつづくよう、市民の皆様に育てていただきたい」と機会あるごとに訴えている。
浦安囃子は昭和50年、市の無形文化財に指定。同年9月、第6回全関東祭囃子コンクールで優勝、高松宮杯を受賞。その技量と哀調漂う音色は高く評価されてきた。「幕張メッセで行われるイベントや全国各地のお祭りなどに年間10回くらい出演し、外国人にも喜ばれている」と吉野さん。保存会は平成元年11月には初の海外公演、スペインで開かれたジャパンフェスティバルにも参加。
浦安囃子は東京・葛西囃子にほれ込んだ漁師仲間5人が昭和21年、江戸川区鹿骨地区の伝承者から習い伝えられた。笛、大太鼓、鉦(かね)各1人、締太鼓2人の計5人で演奏。祭り囃子ともいわれ、祭りには欠かせない庶民芸能だ。
最近は女性会員が増え、男役をこなすほか、天孫降臨など神話に題材をとったものから、茶番劇(お笑い)などまで硬軟両様の演目で、アドリブをまじえて行う。「人を感動させるには演者と囃子方がぴったり合わないといけない」(杉山さん)。
記念公演まで2カ月。会員たちの稽古には一段と熱がこもる。