Dr.竜の「診察ノー卜」第34話: 抗生物質の服用を抑えよう

抗生物質の服用を抑えよう

 ペニシリンの発見以来、人類は細菌を制御することに成功し、感染症で亡くなる人は激減したかのように思われている。しかし、世界保健機関(WHO)は114カ国からのデータを基に「抗生物質の効かない時代が来た」と警鐘を鳴らしている。

竜 崇正 先生

竜 崇正 りゅう・むねまさ
浦安ふじみクリニック院長
=浦安市富士見2-18-9=

 このペニシリン発見以降の抗生物質乱用の結果、世界各地に抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」が拡大している。極めて深刻な状況だとして、昨年5月、WHOは総会で加盟国に、2年以内のアクションプラン策定を要請。日本政府は今年4月5日に、アクションプランを閣議決定した。
 かつては抗生物質の使用は先進国に限られていた。最近では低開発国でも抗生物質が乱用され、上下水道が不備のため市中に耐性菌が広がり、国境を越えた人の移動で、世界中に蔓延する状況になっている。
 加えて、畜産や養鶏などでも疾病予防や発育促進目的で、多量の抗生物質が使用されており、畜産動物の消化管内で耐性菌が増加し、ヒトへの広がりも指摘されている。
 医療関係では、日本は1980年代からのMRSAの院内流行により、感染制御チームが各病院に整備された結果、病院内での抗生剤の使用は極端に減少している。
 しかし、使用抗生物質の90%が外来での内服薬で投与されているのが現状。ウイルス感染の風邪でも抗生剤を欲しがる日本の悪しき国民性もあって、抗生物質の乱用を止めるのは困難だ。 
 日本政府のアクションプランでは、2020年までに抗生剤の使用を現在の3分の2に減少させるとしている。2014年の現状では肺炎球菌の薬剤耐性率48%、黄色ブドウ球菌51%、大腸菌45%、緑膿菌17%とされる。
 体内にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を持つ人は、耐性のない菌を持つ人に比べ、死亡する確率が64%高まるとされ、生命に重大な影響を及ぼしている。
 淋病の特効薬とされる「第3世代セフェム系抗生物質」が効かない状況が起きており、全世界で毎日100万人が淋病に感染しているとの報告がある。細菌が人類に襲いかかる時代が来ている。


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