うらやすの人(9): 東京湾の “海苔文化” を次代に

うらやすの人(9): 東京湾の “海苔文化” を次代に

こだわり続けて60年 味も香りも一級品
丸茂海苔店社長 丸茂陽一さん

 3月末、(株)丸茂海苔店(北栄1-12-40)が市の優良企業として表彰された。10年以上にわたって小学生の職場体験を受け入れていることが評価された。「東京湾の海苔漁は衰退気味。でも味の深み、香りの良さは一級品です。海苔の将来を握っている子供たちにそれを伝えたい」。丸茂陽一社長は、浦安の海苔についての思いを語りだした。

チーバ君をデザインした新商品

チーバ君の包装紙を手に、陽一さんの顔がはころぶ

 丸茂海苔店は父親の今朝雄さん(昭和56年、67歳で死去)が、奉公先の海苔店から独立して興した。東京・押上駅前で始めた店は戦災で失ったが、戦後母親の実家の浦安で再興。陽一さんは小学生(浦安小学校)の頃から父の横でソロバンを弾くなどして家業を手伝った。
 「おっつけ(みそ汁)で顔を洗って出直しておいで」
 海苔漁の漁師の家に出向いて買い付ける “山買い” に初めて出かけたとき、怒鳴られた。そのとき陽一さん、高校3年生。買値と売値の差がありすぎたのだ。
 訪間の際に「失礼します」と言った言葉にも「丁寧すぎる、カッコつけるな」と小言。浦安の漁師は言葉が荒い。でもさっぱりとした気質。「すぐにみんなに可愛がってもらえた」と振り返る。

◆浦安の海苔は東京湾の貴重品

 「何時間見ていても海苔は飽きない。どこで、いつごろに生産されたかも分かります」と陽一さん。妻の満枝さんも「この人は大の海苔好き。いつも海苔とお話しています」と “証言” する。
 60有余年にわたって育んだその知識を、少し披露してもらうと…。
 海苔のおいしい時期は、11月後半から1月末までに採れたもの。日照時間が短く、草(海草)が柔らかいとか。
 上手な海苔の買い方はどう使うのか具体的に店側に示すこと。店は注文に応じて、穴のない良形のものとか、香りに重点を置いたものなど最適品を選択してくれる。丸茂海苔店では50種類以上の商品を揃えている。
 同店では漁師から仕入れた海苔をもう一度 “火入れ” して乾燥させ、マイナス25度で保管する。太陽光線にさらすのはご法度。千葉県内で海苔の卸業者は25軒ぐらいあるが、ここまで細心の注意を払っているのは2~3軒とか。

まるも・よういち 71歳。浦安出身。高校3年生で本格的に海苔業に取り組む。大相撲の東京、名古屋、大阪場所で土産品を販売。本店(北栄)、猫実店、魚市場店を営み、江戸前の商品は県漁連指定、浦安観光協会優良名産品の推奨を受けている。

まるも・よういち
71歳。浦安出身。高校3年生で本格的に海苔業に取り組む。大相撲の東京、名古屋、大阪場所で土産品を販売。本店(北栄)、猫実店、魚市場店を営み、江戸前の商品は県漁連指定、浦安観光協会優良名産品の推奨を受けている。

◆千葉の海苔漁師、10年間で半減

 海苔漁の先行きは厳しいと陽一さん。埋め立てや後継者不足などから海苔漁師は年々減り、千葉県下で一時は500軒ほどあったのが現在約280軒、生産量も全国の4%程度にまで落ち込んでいる。
 「昔は食卓にタマゴと海苔があったらOKだったが、今はお客の口も肥えた。若い人の感覚で新しい商品を開発していかないと取り残される」
 陽一さんは、居合わせた3代目の長男、一城さん(44)を見やった。昨年末、一城さんが開発したチーバ君(ゆるキャラ)をデザインした包装が好評で、後継者への期待は大きい。
 市内の多くの小学校から頼まれる職場体験に協力を惜しまないのも、未来を見据えてのものだ。「機械を使っての海苔の裁断や袋詰めなど、実に楽しそうに学んでくれる。体験後も “この店の海苔はおいしいよ” と母親らを連れて来てくれる。とても可愛いですね」
 笑顔が弾けた。


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