震災特集: 市民を守るために 浦安市消防本部特別救助隊 宇田川憲次・中隊長

 震災特集 

 東日本大震災で浦安市は3万7千世帯、9万6千人もの被災者が出た。
 あれから3年。激しい揺れは人々の記憶から薄れ、歪曲した道路や駅前広場などは元の姿を取り戻しつつある。復旧・復興に平成26年度も213億円がつぎ込まれる。
 しかし、被災者や救助員ら一人ひとりの胸には、今も当時の辛い思いが顔を出し、近未来に予想される大災害発生の備えに心を痛める。
 浦安の人たちのあの日、今、これからを追った。

市民を守るために

浦安市消防本部特別救助隊 宇田川憲次・中隊長

 「災害現場はさまざまな姿をしています。その現場に立ち、人を救助するには強い気持ち、絶対に負けない心を持つことが大事です。そのために毎日訓練を重ねています」
 市消防本部特別救助隊第1中隊の宇田川憲次隊長(46)は、救助隊員に求められる要素をこう話した。「3.11」が起きる前からの信念であり、災害後は一層この思いが強まったという。

特別救助隊 宇田川憲次 中隊長

特別救助隊の宇田川憲次中隊長

“その日”は非番だった。水難訓練から自宅に戻り、遅い昼食を摂っている最中に激しい揺れに襲われた。PTA会長を務める小学校に駆けつけ、児童を校庭に避難させた後、消防本部へ。ガス漏れ、塀の倒壊の恐れ、瓦が落下しそう… ひっきりなしの通報に、集まってきた非番組らと一緒になって対応した。
 「入船地区で電線が道路上に垂れ下がり、火花がパチパチなっている」の報で現場に急行。立入禁止のロープを張る脇を、帰宅途中のサラリーマンらが通る。周囲は停電で真っ暗。「気をつけて」。暗闇に声をかける行動は、交代が来る午前3時ごろまで続いた。
 以後3日間休みなしの警戒態勢。消防職員167人が総動員された。同年3月末までの災害出動件数は67件、救急出動29件(重傷2人)。ドアなどが壊れ、閉じ込められたケースも3件あった。

 足らない点、強化すべきことなどが見えてきた。消火栓の水を飲料用に浄化できる装置付き水槽車(約5800万円)を初めて導入することが決まった。職員数は震災後10人増えた。
 1月中旬、新庁舎建設のため解体される建造物を使い、コンクリートに穴を開ける訓練「ブリーチング」が市川市消防と合同で行われた。狭い通路に机やロッカーを並べ、この間を潜り抜けていく訓練も。建物の下敷きになった人命をどう助けるか、体に覚えこませるのが目的だ。

 「3.11は私の想像を超える被害でした。市民を守るため何ができるのか、今もこれからも考えていきます」。強い決意を静かに話した。


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